
わが家は地元の激安スーパーの常連なのですが、そこでよく見かける光景があります。
それは、菓子パンを大量に買い込む高齢者の姿です。
値引きシールが張られていたり、特売になっていたりすると、かなりの人が群がって、あっという間に棚が空っぽに…。
なかには、10個も、20個も買い物カゴに入れている人がいたりして、ちょっと驚いてしまいます。
「毎日あんなに甘いパンを食べて大丈夫なのかな…」と、他人ごととは思えず、なんだか体調が心配になります。
高齢者と菓子パン
もちろん、たまたまそういう場面に遭遇しただけかもしれません。
でも、大量に菓子パンを買い込んでいるのは高齢の方が多いように感じます。
しかも選んでいるのは、袋を開けてすぐに食べられるような、甘〜いクリーム入りのふわふわパン。
「金銭的な事情で、安売りのパンを選んでいるのかな?」とも思いますが、特売品や見切り品とはいえ、1つあたり最低80円くらいはするものです。
朝ごはんとして毎日食べると、一人で月に2400円、夫婦なら4800円と、意外とお金がかかります。
しかも、こう言っては何ですが、スーパーで売っている菓子パンってカロリーは摂れるものの、栄養的にいい点はほぼありません。
でも、世の中にはこういう菓子パンに頼って生活している70代、80代の人たちが少なからずいるというのが実際なのです。
菓子パンを買うのは料理が面倒くさいから?
でも、そんな高齢者を見ているうちに、ふと亡くなった祖母のことを思い出しました。
元から料理が好きではない人でしたが、高齢になるにつれ、さらに料理するのが億劫になっていたように感じます。
「自分一人のために作るのは面倒」とよく言っていて、わたしが車で買い物に連れて行ったときは、唐揚げや天ぷら、ポテトサラダのような普段は自分で作らないようなお惣菜をよく買い込んでいましたね。
菓子パンを大量買いする高齢者を見るたびに、祖母の姿と重なって、なんとなく切ない気持ちになります。

日本人は料理に凝りすぎ?
歳をとるにつけ体が思うように動かなくなり、包丁で細かく切ったり、長時間台所に立つのがしんどいというのがあるのかもしれません。
だから、料理をするのが億劫になって、袋を開ければ簡単に食べられる菓子パンについ手が伸びてしまう…。
気持ちはよくわかります。
でも、そもそも論なんですが、日本人って料理のハードルを上げすぎなんだとわたしは思うんですよね。
毎食、毎日、温かい手料理を並べるのが当たり前。
洋食の日は、ハンバーグにサラダ、スープにパン。
和食の日は、ブリの照り焼きに、おひたし、お漬物、お味噌汁、ごはん。
こんな感じで「主菜・副菜・汁物をしっかり並べてこそ一人前」みたいな価値観が根強いですよね。
でも、高齢者にとってはこの一食を用意するのが本当に大変です。
なんなら、共働きが当たり前の今の若い世代でも、毎日毎食これを作るのは正直きついですよね。

世界の食文化はもっとシンプル
海外の食生活を見ていると、「これくらいでいいんだ」と肩の力が抜けることがあります。
お隣の国・韓国は日本と文化が近いせいか、お母さんの手作りお惣菜がたくさん並ぶのが良しとされています。
野菜を使ったお惣菜が何種類も並ぶ生活は憧れますが、あれだけの種類を作り置きするのは大変すぎて、なかなかマネできません。
ところが、台湾、タイ、ベトナムのようなアジア圏だと、共働きの人が多く、屋台文化がまだ残っているせいか、食事は外で済ませる人も多いようです。
実際、わたしも台湾やベトナムに旅行に行ったとき、お店で食事をしたり、テイクアウトしている現地の人の姿をよく見ました。
ヨーロッパのドイツでは、夕食は簡単に済ませるのが一般的で、パンに、チーズ、ハムやソーセージ、サラダ、果物など、火を使わない食品をお皿に盛るだけなんだそうです。
正直、わが家では毎日外食は金銭的にも体調的にもしんどいですし、冷たい料理ばかりだと体が冷えてしまうので、外国の生活文化をそのまま取り入れるというのは無理ですが、考え方は参考になると思うんです。
毎日手の込んだご馳走を何種類も並べなくてもいい。
こういう風に思えたら、もっと料理のハードルが下がって、自分が高齢になったときに菓子パンを食べ続ける生活は避けられる気がします。

一汁一菜でいいじゃない
料理研究家の土井善晴先生が『一汁一菜でよいという提案』という本のなかで、“ 日常の食事は、ご飯と具だくさんの味噌汁で充分 ”と説いているのですが、まさにこういうことですよね。
食べ盛りの夫と子供たちがいるのでまだ無理ですが、わたし自身は、ごはん、具沢山みそ汁( 豚汁なら最高! )、納豆さえあれば今でも十分です。
栄養もあって、体も温まる。何より作るのが簡単でおいしい。
食事は毎日のことだからこそ、がんばりすぎないことが大切なんではないでしょうか。
シンプルだけど、栄養バランスが取れて、心と体が満たされる食事。
高齢になっても、そういう食卓を囲めるよう、今から「食のハードルを下げる」練習をしておくことが大事だと感じます。
そして、自分自身が将来、菓子パンに頼らずに済むような暮らし方を今から考えていきたいです。