
「トビタテ! 留学JAPAN」という制度をご存じですか?
これは文部科学省が主体となって行っている、官民協働の留学促進キャンペーンです。
日本の若者の海外留学を応援するための制度で、条件を満たせば奨学金も支給されます。
わが家の高校2年生の娘は、「トビタテ! 留学JAPAN」( 以下、トビタテ )を利用して、イギリスへ1ヶ月ほどの留学をさせてもらいました。
今回はその体験を、親の目線で書いてみたいと思います。
この記事のもくじ
応募のきっかけは、学校のポスター
娘が「トビタテ! 留学JAPAN」に応募したいと言ってきたのは、高1の12月。
学校に貼られていたポスターを見て、仲のいい友人が「応募しようかな」と言ったのがきっかけです。
友人の話を聞き、俄然、留学に興味を持った娘。
親に相談すると同時に、学校の先生にも話をしに行きました。
というのも、このトビタテは学校を通して申請する制度。ですから、学校側の協力がないと応募がなかなか難しいのです。
ありがたいことに、娘が通っている学校にはトビタテ利用経験のある先生がいて、いろいろとアドバイスをくださいました。
その先生曰く、
「今からだと時間がなくて大変だから、準備を万全にして、1年先にトライしたら?」
とのこと。
たしかに先生のおっしゃる通り、この時点で12月の半ば。トビタテの応募締め切りは年明けの1月末で、準備するのに1ヶ月ほどしかありません。
ですが、もう1年応募を先延ばししてしまうと、留学に行けるのは高校3年生。
大学受験を考えると、わが家的にはあまり得策ではありません。
先生のアドバイスはごもっともですが、たとえ応募してみて結果がダメだったとしても、翌年に応募するのは難しいので、「とにかくチャレンジしてみよう!」ということで家庭の方針が決まりました。

怒涛の応募準備期間
このトビタテ、ただ申し込めばいいというものではありません。
高校生の場合は書類審査と面接審査の2段階があります。
まず最初の難関が、書類審査。
- なぜ自分は留学をしたいのか?
- 留学することで何を成し遂げたいのか?
この2つを、自分の言葉でしっかり文章にまとめなければなりません。
自分が関心あることを徹底的に掘り下げて考えるのが大切です。
冬休みも正月もそこそこに、毎日親子で話し合い、何度も文章を練り直しました。
学校の先生にも添削してもらいながら、本当に怒涛の1ヶ月。
トビタテの応募様式では質問内容が似通っているようなものもあり、内容を被らせすぎずに文章を考えるのには苦労しました。

できる限りのことはやり、その経緯も応募書類に反映させました

書類通過!次は面接準備へ
怒涛の書類準備と期日ギリギリでの応募の末、なんとか書類審査を通過。
今度は面接の準備です。
優秀なお子さんでしたら書類審査の結果がわかる前から準備に取り掛かるのでしょうが、わが家の娘は無駄な労力は払いたくないという、変に合理的なタイプ。
なので、合格がわかってから、やはりこちらも突貫工事での準備です。
面接は自由形式。
パソコン持参だと万が一の動作不良や電源の問題もあるので、わが家ではスケッチブックを使った「紙芝居プレゼン方式」で挑むことにしました。
トビタテでは定番のスタイルですが、話す内容を全部覚えていなくてもいいという安心感は、緊張しやすい娘にピッタリです。
スケッチブックに手書きするかどうかで迷いましたが、失敗したときのダメージが大きいので、パソコンのPower Pointでスライドをつくり、コンビニでカラー印刷してスケッチブックに貼り付ける作戦にしました。
わが家で使ったスケッチブックはmarumanのA3サイズ( 420mm×297mm )でしたが、他の応募者はもう一回り小さいサイズだった模様。
娘は恥ずかしかったようですが、面接官の方からは「見やすくていい」とお褒めの言葉をいただいたらしいので、結果オーライです。

試験官は2人で、机を挟んで、試験官の前に座り、プレゼンテーションをします
試験官との距離は思ったより近かったけれど、会場全体がザワザワしているので、大きめの声を出す必要があったとのことでした

親としての本音と、娘の変化
正直なところ、娘が「トビタテに応募したい!」と言ってきたとき、戸惑いました。
というのも、うちの娘はもともと自律神経が弱く、朝は起きられなかったり、すぐに頭痛や腹痛を起こしたり。
体調的にも不安があり、ふだんの学校生活だけでもやっとという感じだからです。
しかし、娘と時間をかけて話をした結果、留学に行きたいという気持ちが本気なのと、これほど何かをやってみたいと自分から言ったのは初めてだったので、応援しようと決意しました。
書類審査や面接審査のための準備は、親子2人3脚+学校の先生方でとても大変でした。
ですが、トビタテに挑戦する過程そのものが、娘にとって大きな成長になったと思います。
- 目標に向かって努力する力
- 自分の考えを言葉にする力
- 人に協力をお願いする勇気
これらは学校の授業だけでは得られない経験です。
イギリスで過ごした1ヶ月
本番のイギリス留学中は、ホストファミリーに恵まれ、家庭料理や会話を楽しんだり、語学学校では国も年齢も違う友達ができたりと、毎日が新鮮だったようです。
娘から送られてくるLINEには、よく「世の中はやさしい」と書かれていました。
中学生時代に友人関係トラブルから不登校になってしまった娘。
そんな子が今、海外で笑顔で過ごしているなんて…。
親として、ただただ感慨深かったです。

お金の話も正直に
現実的な話をすると、トビタテの支援金( 51万円 )だけではお金が足りませんでした。
節約できるところは徹底的に削ったのですが、円安&世界的な物価高の影響で、わが家の場合は約40万円の自己負担でした。
決して安いとは言えない金額ですが、娘が「もっとイギリスにいたかった」と言ってくれたことが、すべての答えです。

高校生の初一人海外旅行にしてはハード設定でしたが、おかげで費用が20万円ほど節約できたのと、娘自身は「やればできる!」という自信につながったようです

トビタテを考えているご家庭へ
もしお子さんが海外に興味を持っているなら、トビタテは本当にいい制度だと思います。
世帯年収の制限はありますが、条件をクリアしているなら、挑戦する価値ありです。
結果に関係なく、“挑戦する”という経験自体が大きな財産になります。
「可愛い子には旅をさせよ」とは、まさにこのこと。
娘の挑戦を通じて、親のわたしも勇気をもらいました。
まだ高校生の娘が日本を飛び出し、さまざまな人や価値観、文化に触れることができたのは、トビタテがあったからこそです。
この場を借りて、トビタテに協賛してくださっている企業・団体のみなさまに感謝申し上げます。
これからトビタテを目指すご家庭にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
