
世の中が忙しなく動き、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを追求するのが当たり前となった今、家事は「厄介なもの」として扱われがちです。
食器洗浄機や乾燥機付き洗濯機、自動掃除ロボットなど、家事を肩代わりしてくれる便利な家電が次々と登場し、人気を集めているのもその表れでしょう。
たしかに、忙しい日々の中で家事は大変ですし、面倒に感じることも多いものです。
けれども、そんな家事をはじめとした“暮らし”にまつわる営みを、「できるだけ避けたいもの」としてではなく、ちょっと視点を変えて見つめ直してみたらどうでしょうか。
今回の記事では、“ 暮らし ”を義務や面倒事ではなく、趣味として楽しむという考え方と、そのメリットについてご紹介します。
この記事のもくじ
“暮らし”を趣味にするって、実はこんなに面白い
日ごろから、暮らしについてあれこれ思いを巡らせているわたしですが、“ 暮らし ”にまつわる諸々を義務ではなく、趣味として捉え直したときのメリットには、次の6つがあると思っています。
- 幅広いジャンルについて学べる
- 終わりがない
- お金がかからない
- 運動になる
- 心がスッキリとする
- 脳トレになる
それぞれについて、詳しくお話していきますね。
幅広いジャンルについて学べる
日々の“ 暮らし ”は、お金を生み出すような活動ではないので軽視されがちですが、よく見てみると、実にさまざまなジャンルの知識があってこそ成り立っているのがわかります。
たとえば、料理。食事は健康の要ですから、少しでも体によいものをつくりたいですよね。
そうなると必要になってくるのが、栄養学の知識です。パンやお米だけだと炭水化物ばかりだから、卵で料理をつくって、タンパク質を補おうというのも学問です。
和食だけではなくて、洋食、中華など、ほかの国の食事をつくろうとすると、海外の食事文化や食材の勉強をすることになります。
料理が楽しくなってくると、調理器具にこだわりたくなって、プロ仕様の道具を調べるかもしれません。
このように料理という生活で当たり前のことでも、突き詰めていくと多岐にわたる学びが出てくるのが暮らしの奥深いところ。
しかも、料理、洗濯、掃除、育児、家計管理、健康管理…と、“ 暮らし ”は幅広いジャンルで成り立っているのですから、学びは無限に広がるのです。

終わりがない
“ 暮らし ”は死ぬまで続く、エンドレスゲーム。
しかも、その時、その時によって求められるスキルは刻々と変わっていくのがポイントです。
一つのジャンルであっても、年齢によって求めらるものが違うので、一回学んでしまえば終わりではないのが、“ 暮らし ”の妙味ともいえるでしょう。
先ほどの例の料理にしても、20代では毎日お肉を焼いて、野菜をちょっと付け合わせにすればよかったとしても、70代ではもっとあっさりした野菜が多めの食事で、メインは魚のほうがいいかもしれません。
子どもが生まれれば、子どもの年齢や体調に合わせた食事を考えなくてはいけません。
“ 暮らし ”というと、毎日同じことの繰り返しでつまらないように見えがちですが、人生の節目には大きく、そしてそれ以外は少しずつ変化をしていて、それに合わせて調整する高度なスキルが求められるのです。

お金がかからない
誰もかれもが忙しい昨今、食器洗浄乾燥機やら乾燥機付き洗濯機など、便利家電が注目を浴びています。
ですが、“ 暮らし ”に関わることを自分の手を使って行えば、お金はほとんどかかりません。
もちろん、料理にしても、掃除にしても、道具や材料にこだわればそれなりにお金がかかってしまいますが、基本のキだけを心がけていれば、それほどお金はかからないものです。
たとえば、掃除。家をきれいにするにはあれこれと掃除用洗剤を取りそろえ、高圧洗浄機みたいなハイテクグッズが必要な気がしてしまいますが、ほうきと雑巾でピカピカに磨かれているお寺を思い浮かべると、そんなものはほとんど不要なのがわかります。
楽しみとしてお金をかけたい場合は別として、自分の体と最低限の道具さえあれば、ほとんどの家事はできるもので、お金をかければいいというわけじゃないのが“ 暮らし ”の面白いところ。
むしろお金をかけずにどれだけできるかを楽しめるようになったら、“ 暮らし ”レベルが上がったといえる気さえします。

運動になる
『ランセット』日本特集号「国民皆保険達成から50年」によると、日本の場合、死亡の危険因子のうち身体活動の不足は3番目に死亡への寄与率が高く、2007年には全死亡のうち5万人が、身体活動の不足に起因して亡くなっていとのこと。
仕事をしていても、オフィスでは座りっぱなしというケースでは、実は運動不足という場合が多いのです。
ですが健康のためには運動が必要とはわかっているものの、忙しい毎日にさらにジム通いもしてというのはなかなかにハードというもの。
そこで注目したいのが、家事なんです。
なにもジム通いをして特別に運動をしなくても、1日10分家事をする時間を増やすだけで効果が期待できるというのですから、これを見逃すわけにはいきません。(出典:朝日新聞)
運動もかねて掃除をすれば、家はピカピカで健康でいられるとは、なんとも夢のある話でありませんか。
しかも、家事ならばジムと違ってお金はかからない。まさに一石二鳥ですね!

心がスッキリとする
“ 暮らし ”にまつわることには、子育てのように超絶ストレスがたまるものもありますが、逆に心がスッキリとするものもあります。
代表例は掃除でしょうか。
風呂の掃除とか床の雑巾がけとか、やり始めるまではダルイと思っていても、無心でやっているうちに終わるころにはなんだか気持ちもサッパリしているなんていう経験はありませんか?
その秘密は、掃除で体を動かすと、ストレスに対して効果がある脳内物質のセロトニンが分泌されるから。
セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれていて、心が落ち着いたりポジティブな気持ちになったりする働きがあるので、家をきれいにしながら幸せになれるというわけです。
掃除のほかにも、ガーデニングもリラックスとしてわたしはおすすめ。水やりをして体を使いながら、野菜や花が育っていく様子を眺めるとリラックスできます。
脳トレになる
“ 暮らし ”にまつわる諸々のことを処理するのは、脳をマルチに働かせる作業といわれています。
たとえば、料理をするときには、材料をどうするか、どうやったら段取りよくできるかを考えますよね。これが脳にとってもいいのです。
『家事で脳トレ65―何歳になっても脳が成長する家事のHOW TO』を執筆した脳内科医の加藤俊徳先生によると、家事を楽しみながらしている人は脳が活発に働いているので、元気で若々しく、認知症になりづらいのだとか。
たしかに、わが家のおとなりのおばあちゃんは御年90歳過ぎなのですが、家事が大好きとのことで、料理、洗濯、掃除は毎日欠かさず、家じゅうピカピカ。背筋もシャキッとしていて、認知症の片鱗もまったくありません。
興味深いのが、加藤先生によると「同じ家事でもマンネリ化していつも同じやり方、手順で行っていたり、あるいは義務感だけでイヤイヤ、手抜きをしながら惰性で行っていると、せっかくの家事の効果が得られない」とのこと。
“ 暮らし ”を楽しみ、もっと工夫をしよう、より改善していこうという気持ちが脳にとっては大切なんですね。
まとめ
便利家電が普及し、効率が正義とされる現代では、“ 暮らし ”はつい義務や負担として捉えられがちです。
けれども、その視点を少し変えてみると、日々の家事や生活の営みには、学びや発見、心と体の健康、そして深い充実感が隠れていることに気づかされます。
お金をかけなくても、特別なスキルがなくても、“ 暮らし ”を趣味として楽しむことは誰にでもできること。
自分らしい工夫を取り入れながら、日常の中に小さな喜びや成長の種を見つけていくことができたなら、それはとても豊かな生き方なのではないでしょうか。
忙しさに追われる毎日だからこそ、“ 暮らし ”を楽しむという余白を持ってみませんか?